「地震に強い家にしたいけれど、形はどう選べばいいのだろう」。
そんな不安を、打ち合わせの中で聞くことがあります。
実は、家の階数のバランスは、コストだけでなく構造の強さにも関わっています。
私は自邸を自ら設計し7年間暮らしながら、業務でも10年以上、新築とリフォームの現場に携わってきました。
この記事では、総2階建てが構造的に有利とされる理由と、その考え方をお伝えします。
結論からお伝えすると、耐震性能を重視するなら、シンプルな総2階建てを軸に検討することをおすすめします。
(総2階建てのコスト面でのメリットについては、別記事「部分2階建てより総2階建て?」でも詳しく解説しています。あわせて読むと、コストと構造、両方の視点から判断できます。)
「地震に強い家にしたい」という気持ち、大切にしてください
日本に住む以上、地震への備えは誰もが気になるテーマです。
デザインや間取りと同じくらい、「この家は地震に耐えられるのか?」という不安を抱く方は少なくありません。
その不安は、決して大げさなものではありません。
私自身も自邸を計画する際、デザイン性と構造の強さの両方を意識しながら形を検討しました。
自邸の場合は、最終的に通し柱の位置を確認しながら、総2階建てを基本とする形に落ち着きました。
この選択には、構造的な安心感を大切にしたいという思いがありました。
打ち合わせでは、間取りの使い勝手やデザインの話題が中心になりがちです。
構造の話は専門的で難しく感じられ、後回しにされてしまうことも少なくありません。
それでも、暮らしの安心の土台になるのは、間取りの使い勝手以上に構造の強さです。
問題の本質:見た目の好みだけで、構造への影響を考えていない
多くの方が、家の形をデザインや間取りの都合だけで決めてしまいます。
問題の本質は、階数のバランスが構造の強さに関わることを知らないまま、形を決めてしまうことにあります。
部分2階建てのように、大きな1階の上に小さな2階が乗るような形状では、1階から2階までを1本でつなぐ「通し柱」の数が少なくなりがちです。
通し柱が少なくなると、総2階建てに比べて構造的に弱くなる場合があります。
もちろん、どのような形であっても、しっかりとした構造計算を行い、建築確認という第三者機関による審査を合格した上で建てられるため、過度に心配する必要はありません。
ただ、同じ条件であれば、シンプルな総2階建てのほうが、構造的には単純で強い傾向にあることは知っておいて損はありません。
築20年以上の住宅をリフォームする場合、増改築によって元の構造バランスが崩れてしまうこともあります。
リフォームを検討する際は、新築時の構造がどのような形だったのかを、あらためて確認しておくと安心です。
原因は3つ。すべて「形の複雑さ」に関係しています
通し柱の数が少なくなる
部分2階建てのような複雑な形状では、1階と2階をまっすぐつなぐ通し柱の数が限られてしまいます。
通し柱は建物全体の強度を支える重要な柱であり、その数が少ないと構造的な安定性に影響します。
力の伝わり方が単純ではなくなる
総2階建ては、1階と2階が同じ形で重なるシンプルな構造のため、地震の力が均等に伝わりやすくなります。
部分2階建てのように形が複雑になると、力の伝わり方も複雑になり、特定の部分に負担が集中しやすくなります。
私が担当した現場でも、複雑な形状の建物では、構造計算の段階で追加の補強が必要になった例がいくつもありました。
補強のために梁を太くしたり、耐力壁を追加したりする必要が生じ、間取りの自由度にも影響が出ることがあります。
「どうせ構造計算するから大丈夫」と思い込んでいる
多くの方が、構造計算を行えばどんな形でも同じように安全だと考えてしまいます。
構造計算はあくまで安全性を確保するための最終確認であり、形状によって必要な補強量には差が出ます。
補強が増えれば、その分のコストも積み重なっていくことを、あわせて知っておく必要があります。
構造的な安全性とコスト、この2つは別々の話のように見えて、実は深くつながっています。
形状を複雑にするほど、安全性を確保するための補強費用も比例して増えていくと考えておくとよいでしょう。
解決方法:耐震性を優先するなら、シンプルな総2階建てを軸にする
解決策は、耐震性能を重視する場合、総2階建てというシンプルな形を軸に間取りを検討すること。
「シンプル・イズ・ベスト」という考え方は、家づくりにもそのまま当てはまります。
総2階建てをベースにすることで、構造的な単純さと施工のしやすさの両方が得られ、結果として耐震性能を確保しやすくなります。
私が自邸で選んだ形も、まさにこの考え方から生まれています。
ウォークインクローゼットや畳の間、趣味の部屋といった、こだわりの部分は、構造の基本形を崩さない範囲で加えました。
基本をシンプルにし、こだわりたい部分だけ工夫を加える。この順番が、構造的な安心感とデザイン性を両立させるコツです。
すべてを我慢してシンプルにする必要はありません。
土台をしっかり固めた上で、譲れないこだわりを少しずつ形にしていく。
この順番を守るだけで、安心感と満足度を両方手に入れやすくなります。

今日からできる具体アクション
- 検討している間取りの通し柱の位置と数を、図面で確認してみる
- 耐震等級について、担当者にどのレベルを確保できるか確認する
- 複雑な形状を希望する場合は、追加の補強費用がどの程度かかるか質問する
- 総2階建てを基本にしつつ、こだわりたい部分だけ増築する形を検討する
- 築20年以上の住宅は、耐震診断を受けて現状の構造を確認してもらう
「シンプルな形が構造的に有利」という知識を持っているだけで、打ち合わせでの質問の質が変わります。
分からないことは遠慮せず、担当者にどんどん聞いてみてください。
まとめ
家の階数のバランスは、コストだけでなく構造の強さにも関わる大切な要素です。
総2階建ては通し柱を確保しやすく、力の伝わり方もシンプルなため、部分2階建てに比べて構造的に強い傾向があります。
もちろんどのような形でも構造計算により安全性は確保されますが、シンプルな形ほど無理のない構造になりやすいことは事実です。
耐震性能を重視するなら、まずは総2階建てを基本形として検討し、こだわりたい部分だけ工夫を加えていく。
この考え方が、安心感とデザイン性を両立させる家づくりにつながります。
自邸を建てて7年、そして10年以上の現場経験から、私はシンプルな構造の安心感をお伝えしたいです。
新築を検討している方も、リフォームを考えている方も、デザインの話に加えて、ぜひ構造の話も担当者にしっかり聞いてみてください。
その一歩が、長く安心して暮らせる家づくりにつながります。
デザインと構造、どちらも妥協せずに考え抜いた家は、住み始めてからも大きな安心を与えてくれます。
その安心こそが、これから何十年も暮らす家の一番の価値になるはずです。


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