「収納は多ければ多いほど安心」。
そう信じて疑わない方も多いのではないでしょうか。
実は、収納を増やしすぎることには、コスト面だけでなく、暮らし方の面でも見落としがちな落とし穴があります。
私は自邸を自ら設計し7年間暮らしながら、業務でも10年以上、新築とリフォームの現場に携わってきました。
この記事では、収納を増やしすぎないことの意味と、必要な分だけを見極める考え方をお伝えします。
結論からお伝えすると、収納は「多ければ安心」ではなく「必要な分だけ確保する」という視点が、暮らしやすさにもコストにもつながります。
(収納をWICに集中させてコストを抑える具体的な工夫については、別記事「収納はWICに集中!」でも詳しく解説しています。あわせて読むと、コスト面と暮らし方の面、両方の視点で収納計画を考えられます。)
収納が足りなくなったらどうしよう・・・
近藤麻理恵さんに代表される片付けブームの影響もあり、収納の大切さを意識する方は年々増えています。
物が増えたときに置き場所がないと困るという不安は、誰もが一度は感じたことがあるはずです。
その不安は、暮らしを大切に考えているからこそ生まれるものです。
私自身も自邸を計画する際、収納の量については何度も悩みました。
最終的には、収納を集中させ、必要な分だけを確保するという方針にたどり着きました。
この判断には、コストだけでなく、もう一つの理由があります。
打ち合わせの中で「収納は多めに」と伝える方は多いですが、その理由を突き詰めて考える方は、実はそれほど多くありません。
なんとなくの安心感で数を増やしてしまうと、後から振り返ったときに使いこなせていない収納が出てくることもあります。
「多いから安心」ではなく、「必要だから確保する」という順番で考えてみてほしいのです。
問題の本質:「収納が多いと物が増える」という現象
多くの方が、収納は多ければ多いほど良いと考えています。
問題の本質は、「収納が多いと、かえって物が増えてしまう」という現象を見落としてしまうことにあります。
「とりあえず収納できるスペースがある」と、人は不要なものでも捨てずに置いてしまいがちです。
結果として、せっかく確保した収納スペースが、本当に必要なものではなく、なんとなく取っておいたもので埋まっていくことがあります。
収納を増やすことは、単純に「安心」を増やすだけでなく、「物を減らす機会」を減らしてしまう側面もあるのです。
築20年以上のお住まいでも、この現象はよく見られます。
長年の間に収納が物でいっぱいになり、いざ片付けようとすると何から手をつければよいか分からなくなってしまう、という声をよく耳にします。

原因は3つ。すべて「収納量への思い込み」から生まれます
「収納は多いほうがいい」という一般論を疑っていない
多くの方が、収納の量について具体的な検討をせず、「多いほうが安心」という一般論だけで判断してしまいます。
この思い込みが、コストアップと物の増加という2つの問題を同時に引き起こします。
一般論を疑わずに受け入れてしまうと、自分たちの本当の暮らし方に合った量を見極める機会を失ってしまいます。
収納を増やすと面積も増えることを考えていない
収納スペースを増やすということは、その分の床面積が必要になるということでもあります。
収納を多く作った結果、居住スペースが狭くなったり、家全体の延床面積が大きくなってコストアップになったりすることも懸念されます。
「物を減らす」という選択肢を検討していない
収納を増やす前に、そもそも所有する物の量を見直すという選択肢を検討する方は、決して多くありません。
私自身、収納を集中させたことで、家族にも物を選んで持つ意識が生まれたと感じています。
もっとも、この話を妻にしっかり伝えるのは、なかなか勇気がいることでもありました。
物への価値観は人それぞれなので、一方的に押し付けるのではなく、家族みんなで話し合いながら折り合いをつけていく姿勢が大切です。
時間をかけてじっくりと向き合うことで、お互いに納得できる着地点が自然と見えてくるはずです。
解決方法:収納を集中させ、「物を選ぶ」暮らしを後押しする
解決策は、収納を必要最小限に集中させ、物を選んで持つ暮らし方を後押しすること。
収納スペースを無駄に増やさないことは、建築コストを抑えるだけでなく、不要なものを買わない、置かないという習慣づくりにもつながります。
収納が限られているからこそ、「本当に必要なものだけを持つ」という意識が自然と芽生えてきます。
私の家でも、限られたスペースの中でやりくりする必要があるため、家族の持ち物にも自然と優先順位がつくようになりました。
「収納を減らすこと」は、我慢ではなく、暮らしを整理するきっかけになります。
もちろん、収納をゼロにすればよいという話ではありません。
必要な場所に、必要な分だけ確保するというバランス感覚が大切です。
このバランスは、家族構成やライフスタイルによっても変わってきます。
子供の成長とともに物の量も変化していくため、将来的な変化も見据えながら、無理のない範囲でゆとりを持って計画することをおすすめします。
今日からできる具体アクション
- 家にある物の量を把握し、本当に必要な収納量を具体的にイメージしてみる
- 「収納が多いと物が増える」という視点を、家族と共有してみる
- 収納の面積が、居住スペースや総コストにどう影響するか担当者に確認する
- 収納を増やす前に、今持っている物を減らせないか一度見直してみる
- WICなど1箇所に集中させた場合の使い勝手を、実際にシミュレーションしてみる
- 引っ越しや模様替えのタイミングで、持ち物を見直す習慣をつけておく
- 家族一人ひとりの「これだけは減らしたくない物」を確認し合っておく
「収納は少なめに」ではなく「収納は必要な分だけ」と考えてみてください。
その視点の違いが、暮らしにもコストにも良い影響を与えてくれます。
極端に減らす必要はなく、あくまで自分たちにとって「ちょうどいい量」を探すことが目的です。
まとめ
収納は多ければ多いほど安心という考え方には、コスト面だけでなく、「収納が多いと物が増える」という見落としがちな落とし穴があります。
必要な分だけの収納に集中させることは、建築コストを抑えるだけでなく、物を選んで持つ暮らしを後押しする効果もあります。
収納を増やしすぎると、居住スペースが狭くなったり、延床面積が増えてコストアップになったりする懸念もあります。
「多ければ安心」ではなく「必要な分だけ確保する」という視点をしっかり持つこと。
これが、暮らしやすさとコストの両方を大切にする収納計画に確かにつながります。
物と丁寧に向き合う時間そのものが、これからの家づくりの満足度をより一層高めてくれるはずです。
心にゆとりも生まれます。
自邸を建てて7年、そして10年以上の現場経験から、私はこのバランス感覚の大切さをお伝えしたいです。
新築を検討している方も、リフォームを考えている方も、収納の量を決める前に、一度今の暮らしと持ち物を見直してみてください。
その振り返りが、無駄のない収納計画への第一歩になり、暮らし全体をあらためて見直す良いきっかけにもなるはずです。


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